ROIとは?ROASとの違いからメリット・デメリットまで
マーケティングの効果を測定するときなどに「ROI」と呼ばれる言葉が登場します。ROIは投資コストに対する収益性を分析する重要な指標であり、企業のマーケティング担当者は理解しておくべき用語です。
さらに、ROIはマーケティングだけでなく、経営やビジネスの場面でも用いられます。そのため、ROIの計算方法やROASとの違いについて理解することで、様々な場面で役立つでしょう。
本記事ではROIの概要から、ROIのメリット・デメリット、ROIを上げるポイントと注意点までを解説します。
1.ROIとは?
ROIは「Return on investment」の略で、日本語では「投資利益率」や「費用対効果」と呼ばれます。
事業や施策を行った際に、投資した費用から得られる利益・効果を指す指標です。ROIはパーセンテージで示され、数字が大きくなるほど収益性が高く、マイナスに近づくほど収益性が低い投資であることを示します。
マーケティングにおいてROIが重視される理由は、費用対効果が簡単に把握・分析できるためです。近年ではマーケティングツール・手法が多様化しており、施策を導入しても成果が出るまでには期間がかかるため、マーケティングの収益性が分かりにくい傾向にあります。
ROIは「投資額」と「利益」のみで費用対効果を算出できることから、経営やマーケティングの場で広く活用されています。
1-1.ROIの計算方法
ROIの計算方法は、以下の計算式に沿って行います。
ROI(%)=利益÷投資額×100
「利益」には、売上高から経費を差し引いた金額を入れてください。対して「投資額」には、事業や施策を行うために投入した資金額を入れます。
たとえばあるマーケティング施策を行って、以下のように利益が出たとします。
- マーケティング投資額:500万円
- 売上高:1000万円
- 製品原価:100万円
- 販管費:200万円
以上のケースでは、1000万円-(500万円+100万円+200万円)=200万円が利益額となります。
利益(200万円)と投資額(500万円)をROIの計算方法にあてはめると、以下の通り40%と算出できます。
ROI(%)=200万円÷500万円×100=40%
ROIを求めることで、規模が異なる事業や施策の費用対効果を把握・分析でき、今後の経営・マーケティングの方向性を判断する際にも役立ちます。
1-2.混同されやすいROASとの違い
ROIと混同されやすい言葉に「ROAS」があります。ROASとは「Return on advertising spend」の略であり、広告投資に対してどの程度の売上が出たかを示す指標です。
ROASの計算方法は、以下の計算式に沿って行います。
ROAS(%)=売上÷広告費×100
ROASは、「広告経由で売上効果が出たか」を分析するための計算式です。ROASを計算する際は「売上」という指標を用います。ROAと異なり「利益」でない点に注意しましょう。利益には、投入した広告費や売上原価・販売管理費など、経費に該当する項目は含みません。
また、ROIとROASは、損益分岐点となる数値も異なります。ROIの損益分岐点は、収益性がゼロとなる0%です。対してROASでは、売上が費用をカバーできる100%以上が損益分岐点となる条件になります。
ただし、ROASの100%以上の数値であっても、広告費以外の経費によっては利益がマイナスとなります。そのため、ROASの損益分岐点については「ROIのように具体的な数値はないものの、100%以上は必要」だと認識しておきましょう。
2.ROIのメリット・デメリット
マーケティングにおいてROIを活用することは多くのメリットがあるものの、デメリットも存在します。ROIを活用するためにはメリット・デメリットを把握して、適切に使いこなすことが重要です。
以下ではROIのメリット・デメリットを解説します。
2-1.メリット
ROIのメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- 実施した施策や事業の効果測定ができる
- 規模が異なる施策や事業の改善ができる
ROIの計算式では利益を投資額で割るため、金額の規模を情報として含めません。そのため、規模が異なる施策や事業について効果を計算し比較できます。利益額・事業規模だけではなく、「収益性のパーセンテージ」で比較できるため、評価がブレることなく、改善の必要な箇所を把握できることがメリットです。
以下は、200万円の投資をして200万円の利益が得られる施策Aと、1,000万円の投資をして500万円の利益が得られる施策Bを比較した例です。
- 施策A:100%(ROI)=200万円(利益)÷200万円(投資額)×100
- 施策B:50%(ROI)=500万円(利益)÷1,000万円(投資額)×100
利益だけを見ると施策Bの方が高くなっています。しかし、ROIで比較すると施策Aは100%に対し、施策Bは50%に過ぎません。したがって、施策Aの方が利益は少ないものの、収益性が高いといえるでしょう。
ただし、施策や事業の性質によっては、投資から利益獲得までに長い期間がかかったり、継続的に利益が発生したりするケースもあります。そのため、ROIは長期的な施策の評価が難しいことに注意してください。
2-2.デメリット
ROIのデメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 数値化できない事業や施策の評価が難しい
- 他業種との評価に適していない
ROIは、「利益」を用いて計算するため、数値化できない事業や施策の評価ができません。
たとえば、商品認知度向上や企業のブランドイメージ確立を目的とした施策に投資した場合、成果を金額で数値化することはできません。また、ROIのみで施策や事業の評価を決定すると、特定商品・サービスのリピーターが離れる恐れがあります。
またROIは、製造業と通信業の収益性を比較するなど、他業種との評価を出したい場合の指標としては適していません。業種が異なると売上額に含まれる諸経費や、物理的な生産上限などの水準が変わるためです。
社内の各部門を評価する場合にも、ROIが適していないケースがあります。たとえば製品を多く生産する製造部門と、取引先を増やす営業部門は利益の出し方が異なるため、ROIで同列に評価することはできません。
各部門を評価する場合は、部門ごとの変動費や個別固定費を差し引いて貢献利益を求める必要があります。
3.ROIを上げるためのポイント
ROIは「利益÷投資額×100」の計算式で求められることから、利益を増やす、もしくは投資額を抑えることで数値を上げることが可能です。以下では、利益の側面からROIを上げるためのポイントを2つ解説します。
〇コスト削減を実施する
事業・施策のコストを削減すると、売上高が同じ額であっても利益が増えるためROIは高くなります。無駄を省いて業務にかかる諸経費を削減することにより、結果としてROIを上げることができます。
〇売上が増える取り組みを実施する
売上が増える取り組みを実施すると、その分利益も高まるため、ROIを上げることが可能です。売上が増える取り組みとしては、顧客数を増やしたり、顧客単価を上げたりといった方法があります。顧客1人あたりのリピート回数を増やす取り組みも有効です。
各事業・施策の状態に合わせて、「コスト削減を実施する」か「売上が増える取り組みを実施する」かを、判断すると良いでしょう。
4.ROIを活用する際の注意点
ROIを活用する際は、「ROIの数値が高い=絶対に良い」とは限らないため、注意してください。
たとえば、現時点でROIが同程度の事業所Aと事業所Bにおいて、事業所Aにのみ新システムを導入するとしましょう。新システムの導入には投資費用がかかるため、事業所AのROIは一時的に下がります。しかし、新システムによって生産性が向上した場合、事業所AのROIは事業所Bよりも高くなるでしょう。
事業の成長や継続にかかわる選択を行う際は、ROIだけでなく、ROI以外の指標・投資目的将来性なども含めて考える必要があります。
まとめ
ROIとは、投資した事業や施策の費用対効果を出したいときに活用する指標です。
ROIの計算式は「利益÷投資額×100」で表され、数字が大きいほど費用対効果が高いことを示します。広告運用時に用いるROASとは異なり、投資額に対する収益性を高い精度で計算できることが特徴です。
ROIは利益の金額や規模に左右されることなく、実施した施策や事業の効果測定を行えます。一方で、数値化できない施策に対する評価や、他業種との収益性比較には適しません。紹介したポイントや注意点を参考に、ROIを活用して自社の費用対効果を評価しましょう。
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